2009年06月26日

ST1.1…新作映画を1.1倍楽しむ (5) 翻訳その他編

ST1.1第5回は、字幕訳や原語ならではの言い回しについてです。それだけでは分量が少なかったので、これまでに扱わなかった小ネタなども一緒に触れています。
まだまだ海外のサイトを含めてリサーチ途中ですので紹介し切れてないネタもあるとは思いますが、「ST1.1」はこれで一区切りとしたいと思います。量が揃えば続く…かも。

掲示板にも投稿しましたが、本日6月26日以前に上映終了となる映画館は数えるほどしかなく、幸い映画の日を過ぎた7月3日が標準上映終了日となるようです。

これまでのネタバレ記事
脚本家Q&A
DOSSIERSの紹介
ST1.1 (1) イースターエッグ編
ST1.1 (2) 設定編
ST1.1 (3) キャラクター編
ST1.1 (4) 用語編

以下ネタバレです。

★訳者は松崎広幸という方です。試写会でも本上映でも最初に名前が入っていますが、ジャパン・プレミアでは表示がなかったような。

★船長は「キャプテン」、副長は「サブ・リーダー」という字幕でした。
Captain は23世紀以前のTOSとENTでは船長、24世紀のTNG以降では艦長と訳すのがお決まりになっています。
First Officer は、TOSでは「副船長」とも訳されていました。

★ケルヴィンの導入部を経てタイトル後、最初のシーンは車を暴走させる少年カーク。初めて本編の映像が使われた、予告編第一弾と全く同じスタートです。

「60年代の車を捨てるのは、TOSを捨てる比喩だ」という説はあっさりエイブラムスに否定され、単に古い地球 (アイオワやコルヴェット) と新しい技術 (空中バイクや「携帯」) の融合を見せつつ、やんちゃカークを描いただけです。
ツッコミ的に言えば、TOS「宇宙犯罪シンジケート」ではカークは古い車を運転するのに一苦労していたわけで、カークの性格を含め既に歴史が変わっているという見方もできます。

光るめだま」で、カークの友人ゲリー・ミッチェルは言っていました。
「士官学校時代の君を思い出すなあ。本に足が生えたみたいだった」

★各キャラクターの名前は、TOS吹き替え版とは異なり原語を踏襲しています。
スコッティやスールーの件が有名ですが、それ以外にも厳密にはTOSでは次のようになっていました。

ジェームズ・カーク→ジェームス・カーク
レナード・マッコイ→レオナルド (またはレオナード)・マッコイ
モンゴメリー・スコット&愛称スコッティ→チャーリー (※)
ウフーラ→ウラ
スールー→加藤

※チャーリーのみを名前としている場合と、「チャーリー・スコット」のファーストネームとしている場合の両方あり

なお字幕ではスールーの名前「ヒカル」と、チェコフの名前&父称「パヴェル・アンドレイヴィッチ」は訳出されていません。

当時の翻訳者の話によると、放送局の要請で「スコットはスポックと似ているから」。スールーは日本人ということにし、一般的な佐藤か加藤に…ということだそうです。はるか後にENTでホシ・サトウが入ることを考えると、面白いですね。
ファンの間では常識中の常識とも言える名前の変更ですが、TOSを当時観ていた私の父親は、今回の映画でスールー=カトウということに気づいていませんでした。何ともはや。

今後出るBDやDVDには吹き替えが収録されるはずですが、どのような処置が取られるか楽しみです。

★幼いスポックを侮辱するヴァルカン人の子供、「地球人のオンナと結婚した」。この「オンナ」は原語では whore と言っています。娼婦、売女といった意味です。

★アマンダと話すスポック、コリナーの儀式を行っても「母上への態度は変わらないだろうか」。これは以前紹介したYOMIURI ONLINE (ヘザーの映画館) でも指摘されていた通り、「母上へのあてつけ (非難) ではない」が正解です。

★アイオワのバーでウフーラが頼む飲み物に、「カルダシアン・サンライズ」があります。Cardassian はTNGに登場した異星人種族のカーデシア人で、DS9で極めて重要な役割となりました。
ほかにイースターエッグ編で紹介したスラショー、機関室のセットとして工場を使ったバドワイザー、クラブニアン・ファイアティー、バーボン (ジャックダニエル) の名前が出てきました。
ウフーラが持っていたメニューは、自動的に写真が変わっていましたね。

★バーでのケンカで、カークが侮辱するために使った「ボクちゃん」。その後エンタープライズの保安士官になった相手にやり返されていましたが、原語では "cupcake" 「カップケーキ」という言葉です。

★宇宙艦隊は、字幕では「艦隊」または「連邦艦隊」となっており、一度も宇宙艦隊とは訳されていなかったような…? わざとでしょうか。

★バーでパイクと話し終えた後、カークが手にするケルヴィン型の壊れた塩入れ。これもジョージ追悼の表れですね (脚本家Q&A参照)。

★コバヤシマル・テストのクリンゴン艦も、ネロに破壊された47隻の船も、原語では「ウォーバード」と呼称されています。
従来ではウォーバードはロミュラン艦のみを指す用語で、クリンゴン・ロミュラン両方にあるのは「バード・オブ・プレイ」でした。
ENT「夢への旅立ち」でクリンゴン・ウォーバードが言及されましたが、脚本のブラノン・ブラガがミスだったと認めています。

コバヤシマル時のクリンゴン艦のデザインは、従来のD-7やクティンガ級巡洋戦艦を踏襲しています。

★カークを病気にさせるために使った、泥ノミ感染症のワクチン。原語では「マルヴァラ泥ノミ」と言っており、ENT「地獄への護送船」で言及されました (その時も吹き替えでは「泥ノミ」だけでしたが)。

★初めて (建造中ではない) エンタープライズが大きく映るシーンは、初めて公開されたエンタープライズの画像と全く一緒でしたね。
何度も観たはずなのに、劇場で見ると改めてその迫力に感激しました。
ST11のエンタープライズ

★ブリッジ操舵席の中央付近の目立つ場所にある、中央部が赤い2本の操縦桿状のプロップ (操縦桿ではありません)。これは実在するバーコードリーダーが使われているという話ですが…… (/Film)。

★パイクの発進命令は、"Punch it." (2回目は Let's をつけています)。妙にかっこいいですね。
ピカードの発進命令でおなじみの "Engage." ですが、実際最初に使ったのは製作第一話「歪んだ楽園」のパイクでした。

★スールーが発進に失敗したのは、慣性制動装置を切っていなかったから。従来ではその装置を切ってワープに入ると、壁に叩きつけられて即死するという設定だったはずなのに、なぜか逆になっています。
もっとも原語では「外部慣性制動装置」と言っていますが、これはこれで向こうの人にもよくわからないテクノバブルのようです。
要はブレーキなんでしょう、多分。

★ブリッジでネロの船について議論する際、マッコイが「私は医者だぞ」と言っています。
実際は「物理学者じゃない」と続き、彼おなじみの言い回しです。
中でもTOS「地底怪獣ホルタ」の「私は医者だ、石屋ではない」は、その見事な翻訳で有名です。
その後のシリーズのドクターも、パロディ的に幾度となく使っています。

★ヴァルカンにあった巨大な石像は、映画TMPでも描かれていました。ディレクターズ・エディションDVDでは、CGで新たにたくさん加えられています。

★スポックの船ジェリーフィッシュのコクピット部分は、後ろから見ると丸い窓に三角の操舵席。ヴァルカンIDICのシンボルを模していますね (TOS「美と真実」)。
精神融合のシーンや、もちろん最後にスポックが乗り込むところでも確認できます。

★スポックが船長を辞任した後、サレクと話すシーン。前述のヘザーの映画館にも掲載されているように、「復讐するな」というセリフはスポックが「怒りを抑えられない」ことに対しての「抑えるな」が正しい訳です (なお、スポックは復讐心を抑えられないとまでは言ってません)。
だからこそ、その後サレクはアマンダと結婚した真の理由を告げるんですね。

★ネロの船への侵入法をチェコフが提示する場面で、字幕では「敵船のコースから見て土星のそばを通過します」となっています。
これだとネロの船がこれから通過するので…と取ってしまいがちですが、実際はとっくに先に行っており、追いつけるはずもありません。
原語は確認できていませんが、「我々も土星のそばを通過します」か、「敵船は通過しました (だから後を追う我々も通過する)」あたりの方が誤解を招かないかと思われます。

従来では24世紀の連邦でも実現できていない超長距離転送ですが (最大転送距離は地球円周と同じ4万km)、その上相手がワープ中でも可能となるとあまりにも便利すぎるため、次回作以降はどのような扱いになるのか微妙なところですね。

★スポックがジェリーフィッシュに乗り込むところで、カークを「ジム」と呼んでいます。
「え、もうそんな仲に?」と思うところですが、TOSでも意外と結構ファーストネームで呼んでいます。
その印象をあまり受けないのは、キャラクター編でも書いたように、吹き替えでは「呼称はなるべく統一する」方針が採られていたほか、あくまで上司であるため日本語にすると違和感があったせいでしょうね。
もっとも、だからこそ「バルカン星人の秘密」のラストが生きてくるわけですが。

★スポックがネロの船内でジェリーフィッシュを発進させた直後、独りで歩いているカークのシーンになります。その時カークは、ロミュランの長い銃を手にしています。ところがそのすぐ後、またフェイザーに戻っています。

★最後にネロを助けるかは別にして、なぜあそこまで完璧に船を破壊しないといけないのか。
これは吸い込まれるのをそのままにしておくと、またどこかにタイムトラベルして悪影響を及ぼさないとも限らないからです。

★新旧スポックの顔合わせシーンで、サレクと勘違いして声を掛けた若い自分に、老スポックは「お前の父ではない」と答えます。
原語では「我々の父ではない」と言っており、若いスポックに簡潔に説明する仕掛けになっています。

最後に "Good luck." と言われた後にも、若いスポックは左眉を上げていますね (キャラクター編参照)。

★ラストでようやく金色 (黄色) の制服を着るカーク。出回った写真でカークだけ黒いのを着ていたことは、少なからず話題になりました。
金色…司令・操舵部門
赤色…機関・保安部門
青色…科学・医療部門

ケルヴィンのロバウ船長は珍しく青色となっており、科学調査目的の船であることを示しています。

★そのカークがマッコイに「行くぞ!」と言い、マッコイは「やれやれ」といった表情をします。
原語では "Buckle up!" 「ベルトを締めろ」と言っており、2人が初めて会ったシャトルのシーンが下敷きになっています。

よく宇宙船の揺れに翻弄されることから、ファンの間では「なぜシートベルトがないのか」ということが話題になりますが、あのシャトルだけはこれ見よがしに厳重なベルトがありましたね。
そのシーンでマッコイの右肩のベルトをよく見ると、ねじれていたり平らになっていたり随時入れ替わっています。

★本編の最後を、満を持しての曲と共に締めくくる、おなじみのナレーション。今回はレナード・ニモイがその声を担当しています。
Space: the final frontier.
These are the voyages of the Starship Enterprise.
Her ongoing mission:
to explore strange new worlds,
to seek out new life-forms and new civilizations;
to boldly go where no one has gone before.

字幕では以下の通り。

宇宙 そこは最後のフロンティア
これはUSSエンタープライズが
任務を続行して
新世界を探索し
新しい生命と文明を求めて
人類未到の地へ
航海した物語である

原語で目立つのはTOSで "Its five-year..."、TNGで "Its continuing..." となっている部分が、おなじくニモイが担当した映画ST2「カーンの逆襲」同様 "Her ongoing..." となっている点。
そしてTOSの "no man" が、TNG同様 "no one" になっている点です (ST2でもman)。

字幕では Starship としか言っていないのにUSSになっていたり、特徴的な boldly 「勇敢に」が訳出されていなかったりしますが、そのほかは原語に忠実です。

「特徴的」というのは、to boldly go というように to と 動詞の間に副詞が入るのは分離不定詞と呼ばれ、厳密な英文法的には誤りとされてきました (恐らく日本の中高生が英語テストで書くとアウト)。現在では比較的広く認められ、その代表的な例としてこのナレーションが取り上げられることも多いそうです。
この記事へのコメント
オリジナル版のシーズン2エピソード16の終盤にある「All life forms in the galaxy are capable of superior development」の字幕翻訳を探しております。

「宇宙大作戦 コンプリート・シーズン2 ブルーレイBOX」を観ればいいと思うのですが、今のところレンタルDVDでは見つかっておりません。

情報を集めているうちに、こちらのサイトにたどり着きました。レンタルまたは視聴できるサイトなどご存知でしたら、教えてください。よろしくお願いします。

ところで、「宇宙艦隊」が「艦隊」と訳されている件に関しては、単に字幕の字数制限の問題で入りきらないためじゃないかと思います。「連邦艦隊」から「連邦」は省略できないと判断されたのではないかと思います。

Posted by ぽてと at 2010年02月15日 21:16
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Posted by モンクレールレディース at 2015年01月06日 12:31
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今度は面白かった!スター・トレック
Excerpt: 今回のスタートレックの劇場版は今までに無く面白かった。どうも劇場版は最初のスタートレックから何本か見てきたが、TVドラマの印象が強すぎ、どうにも新鮮味に欠け面白くなかったのだ。しかし、今回はカーク船長..
Weblog: オヤジの映画の見方
Tracked: 2009-06-26 12:29
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